(ややエロ入・苦手な方+15歳以下はUターンにてお願い)














 細い指だな、と思う。
 こんな頼りない、さほど大きくもない(自分と比べて)掌から、滑らかでひんやりしたこの指
先から、どうしてあんな爆発的なエネルギーが放出されるのか。
 神に最も近い男、という呼び名は決して言い過ぎではない。今己が腕の中に抱えている細身の
相手は、いざ戦闘となればそれこそ神かと思うほどに恐ろしい力を発揮する。そしてそれらの技
は全てこの、細い指先から生まれ出でるのだ。まるで魔法か何かのように。
「アイオリア。先程から何をしげしげと人の手を見ているのだね」
 神に最も近い、という、その乙女座の聖闘士はさっきから食い入るように自分の手をみつめら
れていい加減不審に思ったらしい。呆れ果てた声音でぼやいた。アイオリアはその声でやっと我
に返る。
「いや、面白いなと思って」
「面白い? 何がだね」
「お前の指、細い」
「………それのどこが面白いのだね」
 シャカは更に呆れ度3割増の声で呟く。しかしアイオリアにとっては当たり前のことで、むし
ろ胸をはらんばかりに返答した。
「お前は見ていて飽きないのだ」
 ちっとも答えになっていない。シャカは、しかし敢えてアイオリアに握られた片手を無理に引
き剥がすことなく好きにさせておいた。
「…それは誉めているのか、けなしているのか? 獅子よ」
「誉めているに決まっているだろう」
 どこをどう聞いても誉め言葉には聞こえない。…が、もうそれ以上突っ込むのは止めておこう
とシャカは思った。往々にしてこの獅子は自己完結することが多い。
 アイオリアは、まだしばらくしげしげとシャカの手を見つめていたが、やっと少し満足したら
しかった。唐突にその掌に、唇を寄せる。
「…ッ…アイオリア…!」
 獅子は答えず、指先に熱い舌を這わせた。明らかに情動を誘うようにねっとりと、じわじわと
煽る。シャカはびくりと身体を震わせて逃れようと手をひっこめかけたが、勿論許されず、逆に
強い力で相手の胸元に引き寄せられた。
「つ…ウッ」
 シャカの悲鳴に、一度だけ短く「すまん」と告げてから、アイオリアは体勢を直す。もともと
横たわったまま二人は向かい合っていて、しかも両者ともシーツ一枚被っただけの裸体で、再び
互いの身体に熱を戻すのは容易いことだった。
「ま…まだ足りぬのかね」
「いけないか?」
 シャカの戸惑ったような声に、アイオリアは悪びれもせず返す。シャカは更に焦りを滲ませた
声で「いけないという訳ではないが…」とぼそり呟いた。
「…足りない。もっと」
「……ッ…」
 かっ、と頬を火照らせたシャカの顔を、心底可愛いと思いながらアイオリアは勢いよく組み敷
いた。




「…あッ…あ! ゥ!」
 十二分に潤ったシャカの内部を、アイオリアは思う様掻き回す。あがる嬌声は悲鳴にも似て、
悪いとは思いつつも嗜虐的な喜びが胸奥で灯る。
「や…リア……ッ…」
 普段の乙女座しか知らぬ者には、想像も出来ないに違いない。他人に触れられることなぞ髪ひ
とすじ分とて許さないのではないかと思われるこのプライドの高いシャカが、自分にだけは惜し
げもなくしなやかな裸体を預け、泣いて必死に縋ってくる。
 こんな最高の悦楽に酔わずにいられる者がこの世にいるか。獅子は改めて己に与えられた特権
に感動し堅く目を閉じた。更に強くかき抱く。
 絶対に誰にも譲れない、渡せない。この愛おしい彼を。
「お前の中…凄い熱い…」
 ぎゅっ、とアイオリアの背中にしがみつく指先が震える。細い、頼りないあの指で自分にすが
りついているのかと思えば可愛さも増す。弾みで爪を立てられてもその痛みさえ快楽だ。
「凄く…凄くイイ…シャカ…」
「…ヒ…ァッ…や…ン!!」
 夢中で唇を重ね、とぎれとぎれの喘ぎさえ貪る。たまらなく意地悪をしたい気持ちと、大切な
壊れ物をそっと優しく扱いたい想いとが際限なく交錯し、アイオリアは軽いパニックに陥る。い
つもシャカを抱いていると、自分がどうしたいのかも判らなくなるくらい溺れる。
「リア…っ…リア…」
 呼ぶ声がいよいよ切羽詰まってくると、アイオリアは背中に回されたシャカの手を解いて代わ
りに自分の手を重ねてやり、強く握った。
 細い指が自分の指と絡み合う。強く、指先が白くなるくらい強く握る。
「あ、あ、ァあ!!」
 シャカの、胸が貫かれるような綺麗な青い瞳。その潤んだ両の瞳から涙が伝い流れる。この瞳
が見たくてアイオリアはいつも(どんな体位でも結局最後には)正面からシャカを抱く。
「シャカ……ッ…!」
 きつく握りしめたシャカの指に、自分の指ごとキスをした。




「…この指」
 アイオリアは、まだシャカの指を弄んでいる。
 あの後更にもう一度して、やっと少し落ち着いたアイオリアは、まるで母親の指にじゃれつく
子供のようにシャカの手を触る。
「この指の、どこからあんな技が出るのかな…」
 シャカは漏れ聞いたその台詞に、微かに苦笑した。
「六道を巡りたいのかね? それとも五感を喪ってみたいとでも? お望みならばかけてやらな
くもないが」
 アイオリアは途端にたじろぐ。
「そんな訳があるか! …ただ俺は、お前の指が細くて綺麗だから…」
 アイオリアの言葉も途中で、シャカは不意に小さなあくびを漏らした。
「寝る。…そろそろ離したまえ。気になって眠れぬ」
「寝ていていい。手くらい好きに触らせろ」
 やれやれ、とシャカはため息。
「…手どころかこの私の身体すべてを自由気ままに扱っていて、良く言う…」
「え」
 シャカは、もう一度笑った。そしてゆっくりと目を閉じた。手は、結局そのままアイオリアに
預けたきり無理に引き戻そうとはしなかった。














指、はエロいと思う。にゃんとなく。俺的基本獅子乙女エロ。