略奪



                                             


 きらきら、と薄い光が、色味の無い岩山ばかりの風景の中で閃いていた。
 およそ人の訪れることが叶わない筈のジャミール山奥、その秘境にひっそりと立つ石造りの建物の前。白っぽい布を僧衣のようにまきつけた人間がひとり、長い金の髪を風に揺らしながらぽつんと立ちつくし、館の主が帰るのをもう何時間も待っていた。



「…珍しい人がお見えですね」
 唐突に、声だけが先に降ってくる。乙女座の黄金聖闘士は、しかしまったく驚いた風もなく、ただゆるりと首だけを巡らせた。何もない空間に、やがて黄金の光が生まれ出た。
「通り道だったのでな」
 黄金の光は瞬時に人のカタチを取った。それは両手いっぱいに荷物をかかえた若者の姿となり、砂利を踏みしめる音と共に実体化した。簡素な民族風の服を纏い、非常に美しい面立ちを優美な微笑みで彩って訪問者を迎える。乙女座は、いつものように目を閉じたまま彼を見返した。最後に彼に会ったのは、もう四年くらい前になるか。
 本来ならば自分と同じように黄金聖闘士を名乗る筈の、牡羊座。
「通り道というには随分奥まってますけれど」
 奥まっている、どころの話ではない。ここは通常の人間ならば来ることもできない険しい断崖に挟まれ、ご丁寧に亡霊の道案内付きなのだ。言うまでもないが、亡者どもの案内先はこの館ではなく死の国、である。
「直線距離で、だ。任務より戻るのに、のたくさと二本の足を動かすほど私は悠長ではない」
「相変わらずですね、シャカ」
 牡羊座、であるジャミールのムウはシャカのそんな物言いに笑ってみせた。
「随分と待たせてしまったようですね。中に入って待っていて良かったのに」
「中で待つほどのこともないかと思ったのだ。…こんなに遅いとは思わなかった」
 本当のところは、居ないのならさっさと退散しようかとも思ったシャカだった。しかし、せっかく滅多に無い「やる気」(?)を出して訪ねてきたのに何の成果もなく帰るのは口惜しく、とりとめのない憂鬱を持て余しつつ時を忘れていた、というのが実情だ。
「お詫びに熱いお茶を煎れてさしあげます、どうぞ中に」
 朗らかな声で言うなり、館の主は瞬時に消え失せた。現れた時と同じようにテレポートした同僚を閉じた目のまま見送って、それから目の前に聳える建物を見上げた。
 玄関はおろか入るための扉さえない、主の性格を如実に現しているかのような石造りの館。
 ───現実の一切を、拒絶しているのか。
「…おろかな…」
 ひそかに呟いた後、シャカはゆるりとひとつ、ため息をついた。
 愚かなのはむしろ自分の方だろう。こんなところまで来て、自分はいったい何を彼にうち明けたいのか、どうしても決心がつきかねていた。



 ムウは、終始笑みを絶やさず、懐かしい同僚の訪問を素直に喜んでくれた。
「紅茶は好きですか? チャイにしましょうか? 甘いものは食べられますっけ?」
「なんでも良い」
 つっけんどんに答えるシャカに椅子を用意し、その前にこじんまりとしたテーブルを寄せる。すぐにテーブルの上には2揃いの茶器と甘菓子の乗ったバスケットがおかれ、冷ややかな室内の空気に柔らかく温かい香りが混じりだした。
「前回は…三年…いや四年前だったかな。しばらく見ない間に大きくなりましたねえ」
 支度を終え、ムウは自らも椅子をひとつ寄せてきてシャカの真向かいに座る。シャカは呆れた様子でついと冷たい表情を向けてきた。
「大きくなったとはなんたる言い種だ。同じ歳のくせに」
 そういうシャカは、今年で十七になる。ムウが聖域を出ていったのが七つの年だから、もう十年の歳月が流れていることになる。
「そうでしたね。せいぜいが半年、早いだけで」
 含み笑いの昔馴染みを軽く無視し、シャカは閉じたままの目でゆっくり辺りを見渡した。実際に目に映してはいないから細かい部分は判らないが、全体的にとても殺風景な部屋だ。隅の方から暖気が漂ってくるので、多分暖炉?に火でも起こしたのか。
 そんなシャカの振るまいに、ムウは微苦笑した。あくまでも目を開けずに室内を観察しているのが笑えてならないのだろう。
「…で、今日はいったいどんな気まぐれですか」
 お茶を勧め、己もひとくち啜ってから、ムウは穏やかに切り出してみた。
 てっきり「別に」とでも答えるかと思って言った言葉だったが、シャカは意外にも黙りこくったまま、ゆっくりと向き直ってきた。逡巡している様子も酷く珍しかった。
「…シャカ?」
 もっとも、ムウにとっての「シャカ」は六歳から七歳までの記憶が主で、あとは数年おきに指折り数えるほどしか会っていない。どんなシャカがシャカらしいのか、本当のところは判別がつかないというのが正直なところだ。それでも、今日のシャカはなんだかひどく疲れているような感覚が伴った。
「…キミが、未だに聖域に戻らないつもりなのかどうか、それを確かめたい」
 長いこと黙った挙げ句、ようやくシャカは口を開いた。しかも開口一番の直球だった。ムウは、何と答えていいものかかなり悩んだが、シャカが自分の回答を待っているようだったので諦めてしぶしぶ答えた。
「戻る気は、ありません。少なくとも今の聖域には」
 その台詞は、以前にも発したものだ。この館にムウが隠棲するようになって一年程度だったか。シャカが単身ふらりと散歩の途中のように訪ねてきて、やはり同じ問いを浴びせてきた。ムウは何の弁解もなく、ただノーと答えたのだった。
「…そう…か…」
 しかし、シャカは釈然としない様子だった。本当に珍しい、とムウは思う。今までも何度か気まぐれに訪れてくれた彼だが、決して自分の言ったことに揺らいだりはしなかった。良く言えば寛容で、悪く言えば無関心だった。教皇の「非常召集」にさえ応じない自分を、咎めない代わりに容認するようなことも言わなかった。
「…とても、今更なのだが、何故「今の」聖域なのか、訊いてもいいかね」
 更に珍しく、シャカは躊躇いがちにつっこんできた。ムウは目を見開いた。昔と変わらず繊細な同僚の顔を、いっそうまじまじと見つめて。
「本当に今更ですね。何故それを訊きたいんです? 今日…今になって」
「そうだな、その通りだ」
 訊くのなら最初に訊くべきだ。シャカも自覚していた。自分の無自覚な無責任さが、たとえばこんなささいな問答にさえ影響している。シャカはゆっくりとため息をついた。自己を嫌悪する感情が生まれるとは、昔ならば思いもしなかった。
「自分が不利になると途端に対処法を考える。これが泥縄、というヤツだな」
「…どうしたんですシャカ。アナタらしくもない」
「私らしいとはどの部分をもって私と成すのか、私には判らぬ」
 シャカは自嘲気味な笑みを浮かべた。一拍置いて、言葉を選びつつ更に言った。
「実は、キミに訊きたいことがあって…いや、話してみたいことがあって来た。答えたくないならば無理に詰問するつもりはない」
 ムウは、不審そうに友人を見つめた。こんな乙女座は初めて見た。小さいときから超然としていて、別種の生き物のように何事にも動じない彼が、わざわざこんなところにまでやってきて、相談を持ちかけてくるなど。
 じっ、と尚も相手の顔を窺う。
 四年も会わないで居た間に昔馴染みはおおよそ少年の域を脱していた。微妙に成熟しかけ、しかも面立ちにまだ若さの残る清廉な美貌。ムウ自身、美貌というなら負けず劣らずではあるのだが、この乙女座の持つ線の細さとはまた趣が異なっている。
「…いいでしょう、答えられることならば」
 随分焦らしておいてから、ムウはやっと答えた。シャカは明らかにほっとした顔になる。そんな表情の変わる様が、何故かムウの心の奥底に火を灯した。
 綺麗だ、と心からそう思った。



「キミは、教皇の愛弟子だ。そうだな?」
 本当に直球だ、ムウは密かに呆れかえった。いきなり核心にきた。
「ええ、そうでしたね」
 また過去形だ、とシャカは気が付いた。が、そこには突っ込まず、更に続けた。
「キミが聖域に戻らないのは、「今の」教皇に疑問があるからだろう」
 ムウは、ため息をついた。敢えて答えないでいる答えをそのまま相手にさらけ出されている状態というのは正直痛い。
「…どうでしょう。言いたくないことは黙っていていいんですよね? シャカ」
「教皇が、もしおかしいのだとしたら、つじつまが合うのだ」
「…シャカ」
 シャカは、そこまで言って唐突に黙った。マズイことを口走った、といった顔になる。
「…シャカ。そこで黙らないでもらえます? 何て答えたらいいか判りませんよ」
「───すまない…」
 急に憂鬱そのものの声で、シャカは呟いた。気を落ち着けようとカップを手に取り、ほんの少し口に含む。熱かったカップの中身は大分冷めていた。
「シャカ。アナタが何に気が付いたのかはともかく、私は今のところ自分の葛藤をうち明けるつもりはないんです」
 まるで試しているかのようなシャカの言葉に、ムウはいい加減しびれを切らせていた。しかし、シャカが完全に「味方」であると判断できない以上、ムウは不用意なことを一言も漏らす訳にはいかないのだった。
 ところが、ムウのこの言葉にシャカは相当なダメージを食らったらしい。にわかに顔色を青くしてますます口を閉ざしてしまった。シャカにしてみれば、教皇に対する疑問を彼にうち明けたくて来たのだから、相手に初めから拒否されてしまえば言葉もないのだ。
 もっと、教皇の存在自体に疑いを持てればシャカも歯切れのいい話し方ができたろう。しかし、ここまで来て尚シャカは女神と、その代行者である教皇に対する本能のような忠誠心を捨てることができなかった。何故ならそれ自体が、もともと聖闘士として育てられた訳でもなく望みもしなかった自分を、唯一聖域につなぎ止める楔だったからである。
 …でなければ、聖闘士である自分自身を放棄する以外にない。もはや、それ以外の生きる道をみつけられないだろうに。
「なるほど…やはり私は未熟のようだ。…己の葛藤を他人に委ねるべからず、か」
 ため息とともに漏らした言葉に、ムウもさすがに傷つけたと思ったか、あわてて言い添える。 「そうは言ってません。ただ、この問題は私自身持て余しているんです」
「邪魔をしたな」
 いきなりシャカは立ち上がった。これ以上問答しても無駄だと思ったらしい。ムウは喧嘩別れみたいな展開に更にあわて、自分も椅子を蹴倒しながら立ち上がった。
「ま、待って下さい! そんなすぐに帰らなくても」
 制止の言葉を無視し、シャカの姿は陽炎のように揺らいでその場から消えた。…一旦は。
 しかしムウは何もない空中にがっと手を伸ばし、見えない細い腕を掴んで無理矢理引き寄せる。シャカの身体は強引に通常の空間に引きずり戻されて、その勢いで冷たい床に手ひどくたたきつけられた。
「…ッ…!!」
「シャカ…ッ!」
 ムウは、自分の念動力を振り絞ってシャカの瞬間移動を妨げたのだ。最も神に近いと謳われるシャカでさえ、念動力自体ではムウには叶わない。それを狙った訳ではないのだろうが、無意識に引きとめようとしてうっかり全力を尽くしてしまったことに、ムウは後から気が付いた。
「す、すみません! ごめんなさい、つい!」
「あっ…危ないではないか! 人が跳ぼうとしている横から障壁を張るとは!」
「だから、つい…すみません…! だって…」
 必死で謝りながら、ムウは床に倒れた友人を助け起こそうとして、掴んだ腕はそのままに屈みこんだ。無造作に巻き付けられていた長い布が大きくはだけて、シャカは上半身が半分がた剥きだしになっていた。
 …その、滑らかな白い肌に点々と散らばる薄赤い痕。
「───シャカ…?」
 ムウは、自分の見たものが信じられないかのように何度も瞬きした。シャカは気付いていないのか、相変わらず飄々とした表情のままだ。ムウが動きをとめてしまったのでやむなく自力で立ち上がろうとして、…唐突にムウに差し止められた。
「無礼な、これ以上いったい何だね」
「シャカ…アナタ…」
 シャカの肢体には、露骨なキスマークが幾つもつけられていたのだ。何が最も神に近い男だと?
 ムウは突然怒りとしか思えない感情で頭の中が真っ白になった。怒り…? いや違う。
 憎悪に近い。…むしろ、嫉妬だ。
「ムウ…?」
 ムウは今度こそ意図的に、全力をもってシャカの動きを封じた。ありったけの念動力でシャカをその場にぬいとめる。苦鳴を漏らして再び床に沈没したシャカの上にのしかかって、ムウは震える声でシャカに詰問した。
「なっ…なにを! …ムウ!」
「乙女座のシャカともあろう男が、こんなに派手に肉欲を貪っているとはね…」
 言われて初めて、シャカも自分の有様に気が付く。そういえば、昨晩は教皇に呼ばれていつもながら散々「お相手」をしたのだった。普段、鏡等で己の姿を確認したりしないので、そういった痕にはズボラなシャカだったが、言われていることの意味くらいは分かる。
「ちっ…違う…これは…」
「何が違うんですか、誰に抱かれているのかな。それとも抱いてる?」
「やめ……ッ…」
 恥辱で真っ赤になったシャカから、容赦なく服をはぎ取る。服といっても布一枚だから、実に簡単極まりなかった。念動力で身体の自由を奪っている間に、一番敏感な部分を探り当てて掌握すると、シャカの抵抗はあっけないくらいに終わった。



 なまじ、行為に慣れすぎていることが致命的だった。
 シャカは、ムウの手を振り払うことは出来ず、ただ為すがままに犯された。ムウも、自分では思いもかけなかった展開に半ば正気を失いつつ、初めて触れる相手のぬくもりをどうしても手放すことができずに行き着くところまでいってしまった。
「…こんなに慣れて…誰に抱かれてるんですか…」
「あっ…ア…! ッ…ムウ…ッ」
「あの男なんですね…だからここに来たんでしょう?」
「あ…の…男…??」
 穏やかな声しか聞いたことのないムウの、底冷えするような暗い声音。シャカはなによりもその声が恐ろしかった。理解できない様々な感情が闇雲に自分にたたきつけられているのを痛いほど感じたからである。
 また、どうしていいか判らない事態が増えた。ジャミールになど、来るのではなかった。
「ムウ…ッ…やめて…くれ…やめて…」
「今やめたら、アナタの方が我慢できないんじゃないですか?」
「…ッ…!」
 ひくり、と細い喉が反る。その喉元にムウはかぶりつくように口づけた。ぴったりと熱い肌を密着させ、深々と結合している部分を揺らす。その度に自分から腰を浮かせてより深くムウのものを銜えこむシャカに、ムウはくすくすと暗い笑いを漏らした。
 …仕込まれている。
「ア…ンッ…やめ…もう…」
「もう、なんですか?」
「耐え…られ…な……!! アア!!」
 ムウはまた、笑う。自分が何故こんな行為に及んだのか、シャカはきっと気付いていないに違いあるまい。与えられる快感に身を竦めながらただ過ぎ去るのを待つばかりで。
 …だから、あの男に抱かれたりする。そしてきっと、それを茫洋と容認しているのだ。
「少しは抵抗する術を覚えなさい。生娘だってこれよりは刃向かってきますよ」
 シャカには、訳が分からなかった。強姦されている相手に抵抗しなさいと諭される謂われは無いだろう。さすがに腹を立てて抗弁しようと頭をもたげる。
「…キミに…言われる筋合いは…ない! だったらさっさと離したまえ…!!」
「口だけは達者ですね…でも、ダメ」
 ぐっ、と強めに腰をえぐれば、シャカの声は途端に嬌声へと変わる。もうすっかり身体が覚えていて、抗おうにもそうするだけの力が無かった。いつも命令されるがままに、人形のように抱かれることに慣れてしまった。快楽が更に恭順さを後押しした。
「ヒッ…ァ…ッ!!」
「アナタの「お相手」は誰なんですか?」
 シャカは、涙でにじむ視界でムウを見据えた。目を開いて睨んでも、ムウはちっとも恐れ入った様子もなく相変わらず底冷えのする笑みでシャカを見下ろしている。
「……ン…! く」
「ホラね、答えにくい質問を直球で投げかけられれば誰だって沈黙するんですよ、ねえ」
 もっとも、とムウは更に続ける。強弱をつけて腰をゆらめかせながら。
「今更答えてもらえなくても、もう判りましたけど」
 そうなのか、とシャカが一層目を見開く。ムウは、そんなシャカの頬に口づけた。
「本当はこんなことを強いるつもりはなかったんですよ。シャカ」
 ムウは慈愛に満ちた声で念を押した。言葉と、行動とがまったく整合していなかった。
「ア…ア!! は…ッ! や…ア!」
「でもね、アナタがあんな男に好きにされてるなんて知ったら、そりゃあ腹が立つでしょ」
 あんな男、という言葉にシャカはぎくりと身を震わせる。快楽のせいばかりではなく、ムウの声
が心底恐ろしかったのだ。かつての弟子が、師を、教皇をあんな男と呼ばわる。
 …何故…?
「私の葛藤を、アナタは私の言葉無しでは理解しない。ましてや言葉に出しても理解しない可能性もある。故に私はアナタに対しては沈黙を守る」
「ど…うして…理解しない…と」
「そういうところが、既に理解していないのですよ、判ってませんね」
 ここまでして女神と教皇に盲目の正義を信じている以上、やはりシャカに真実を伝えるのは色々な意味で危険だった。女神が見つかっていない今(それを言ったらまずシャカは自分に疑いを持つだろう)、教皇が偽物であることを暴く方法が、ムウには無い。
 だから沈黙するのだ。
「さあ、あんな男よりも私を覚えなさい。きっと、優しくしてあげます」
 シャカはゆるゆると首を振った。これ以上は耐えられそうになかった。シャカは、最後の理性を吹き飛ばして自分からムウにすがりつき、ねだった。
「…頼む…から…ムウ…もう…アアッ! …も…イかせ…て…」
「可愛い人ですねえ…」
 ムウは嬉しそうに頷き、請われた通りにしてやった。ただし、散々焦らしてから。



 シャカは、ムウの寝台で横たわったまま茫然と天井をみつめていた。
(…ムウにまで、こんなことをされて……)
 あれから寝室に場所を移して、二度ほど抱かれた。シャカに抵抗の意思がまったく無くなったことを悟ったムウは念動力の鎖を解いてくれたが、見えない糸で捕縛されているという意味ではまったく変わっていなかった。
「なんか、飲みますか?」
 ムウが隣りに寝転がって、シャカの金の髪を弄んでいたが、シャカが目を覚ましたことに気が付いて顔を覗き込んできた。
「…要らん。付け足しのように優しく振る舞ったとて、私の怒りは収まらぬ」
「おや、怒ってるんですか」
 けろりとムウは返す。シャカはぴしっとこめかみに青筋まで立てる勢いで怒鳴った。
「当たり前だ! 人の身体を何だと思っている! やめろと何度言ってもキミは不埒な振る舞いをやめなかった!」
 しかし、ムウは微笑みを崩さない。それどころかもっと不埒な物言いで返してきた。
「でも、いかせてってねだってきたのはアナタですよ」
「そっ…それは…そういう風にキミが…!!!」
「シャカ」
 ムウは、不意に声のトーンを落とした。
「…言った筈だ、あんな男に好きにされるくらいなら、アナタを喰らい尽くしてしまいたい。いっそこのままジャミールに無理矢理引き留めても」
「……ムウ…」
 シャカが目を丸くしているのをしばし面白そうに眺めて、ムウは突然笑い出す。
「ま、それは置いといて」
 シャカの緊張しきった肩に、ムウはそっと手を置いた。
 しばしの躊躇いの後、ぽつり、と一言。
「──とりあえず、もう少し、時間を下さい」
 それが、一番最初に自分がムウに問いかけた言葉に対する返答だ、とシャカは気が付いた。仕方がないので黙って頷く。この強姦仕打ちに対してはどう返礼してやろうかと鬱々考えもしたシャカだが、結局あんまり建設的?な結論は得られなかった。
「…さ、もう不埒なことはしないから、休んで」
「……」
 ムウは、シャカに毛布を首までかけなおすと、自分は立ち上がって階下へと消えた。(階下とは言うが階段もないこの珍妙な建物はテレポートができなければ上がることも下がることもできない仕組みになっていた。)
 シャカは、再び目を閉じる。さきほどの情事の最中に言われた意味深なムウの言葉を必死に手繰りよせ、ムウが現在の教皇に明らかな悪感情を持っていることだけは理解した。
 …そして、教皇に従ったままの今の自分を決して「信用」していないことも。
(愚かなのは私か…何のためにジャミールまで来たのだ…)
 そうして、シャカは、両手で自分の顔を覆った。
(…私は、…私が…わからない…)
 












さがしゃか強制バージョンで更に救いようもなくむうしゃかしかもエロ。総受サイトの名に恥じぬ
といったところか、いやむしろ猛烈恥晒死ーーーー。乙女座えっれえ尻軽(爆死)なので、基本的
に誰ともオケー。こんなシャカ書く奴☆矢やおい界広し(?)といえどわたしだけだっはー!