STORY


 てな訳で、ここは「地球へ…」を知らない初心者の館だ。 
 とはいえ解説できることはわりと限られている。百聞は一見にしかずといってな! 
 僅かなストーリー紹介で興味を持って原作を読むようになってくれることこそが、 
 我々の希望であって、内容解説だけ読んでその作品を判ったような気になってほし 
 くはないからだ。なので特に結末についてはできるだけ触れないようにする。初心 
 者はネタバレ領域に入らないよう注意されたい。


原作・ストーリー解説

舞台は未来世界。発達していく科学、栄華を欲しいままにする人類とは裏腹に、地球(テラ)は
急速に生命力が衰えていった。長いこと病んだ地球を復活させようと人類はあがき続けたが、ど
んな努力も虚しく、結局人類自体が地球を窒息させていると結論づけるしかなかった。そこで、
地球を再生させるためには人類そのものの変革をしなければならないとし、母星を離れ衛星都市
に移り住んだ人類は、自らの生命管理を「機械」に任せる「特殊政府(スペリオルドミネーショ
ン)体制」を敷いた。S.D体制時代・・・物語はそこから始まる。             

S.D体制元年から、管理社会のありかたに人間が疑問を持たないよう、大人と子供の社会は完全
に切り離して作られた。子供たちは14歳の誕生日に迎える「成人検査」によって管理機械に選別
され、別の社会に送り込まれるシステムとなっている。                  
コンピュータによる生命管理体制は、だが、はからずも人類の中から「新人種(ミュウ)」を生
み出してしまった。ESP能力を持つ突然変異種ミュウは、完全管理の体制から大きくはみ出す存
在であり、体制側としては非常に忌むべきモノであった。彼らは危険因子として狩られ、殺され
ていったが、その数が絶えることはなかった。                      
物語の主人公である、ジョミー・マーキス・シンは幼年育英都市「アタラクシア」で育ったごく
ふつうの少年だった。不気味なほど完全な管理社会の中、彼はむしろエネルギーのありあまった
「不良」児童ではあったが。だが14歳の誕生日を目前に控えて、奇妙な夢をみるようになってか
ら、彼の運命は大きく揺れていく。彼の夢の中では見知らぬ少年と少女が、まだ見ぬ故郷・地球
への憧れを語っていた。美しく懐かしい青い母星の映像。少年は痛切に叫んでいた。「地球へ…
還りたい」と。物語前編を通して貫かれている地球への思慕、それは「地球へ…」という物語の
まさしく中核を為す感情である。                            


第一部解説

上で解説した物語冒頭から、「ソルジャー」と呼ばれるミュウの長・ブルーが、主人公ジョミー
を新しく仲間に迎え、次代のソルジャーとしてミュウの未来を託すところまで、が第一部。ソル
ジャー・ブルーはこの第一部での影の主人公であり、かつ全編一貫してジョミーを通して絶大な
存在感、影響力を持ち続けている。地球へ抱いた想いは元はといえばほとんど全て彼の想いであ
り、ジョミーはそれを忠実に守り続けた。                        


第二部解説

成人検査にパスした子供たちは、更に別の教育を受けるために教育ステーションに送られる。第
二部は、教育ステーションE - 1077 での物語。ジョミーと対立するライバルとして出ることにな
るキース・アニアンと、システムに反抗し敵愾心を持ち続けたセキ・レイ・シロエが中心となっ
て描かれている。完全なコンピュータ管理体制にあくまでもたてつくシロエの行動は、キースの
心に痛い印象を残した。本当にこの社会は間違っていないのだろうか?           


第三部解説

新人種ミュウたちは、ジョミーを新しい長として既にアタラクシアの地の底を離れ、地球に向け
て遠い旅を始めていた。第三部は、その途中でうち捨てられた植民地星「ナスカ」に立ち寄った
ミュウたちが、ナスカをささやかな安住の地としてから奪われるまでの物語になる。(正確には
奪われる手前) 教育ステーションを卒業し、メンバーズエリートとして地球政府の一員となっ
たキースが、ナスカの調査を依頼される。ナスカにおいて、ジョミーとキースは最初の出会いを
果たすことになる。相容れない敵同士として。だが、キースの胸の内には常にシステムへの疑惑
とミュウへの理屈では片づかない「理解」さえあった。                  
                         


第四部解説

ミュウと人類を隔てているものは何か。完全な生命管理の下で人類は何を忘れてしまったのか。
第四部は辛い戦いに始まり、物語は終着点である地球へと収束されていく。         
ジョミーとはまたタイプの違った、強い能力を持つトォニィが主要キャラとして入る。ナスカで
生まれジョミーを敬愛する彼は、だがもはや自分たちを地球に住む人類たちと同等の生き物だと
は感じなかった。それでも仲間であるミュウのため、ジョミーの地球を想う気持ちのために、彼
は戦っていく。そしてキースは地球の母体コンピュータ「グランドマザー」の代理人としての権
限を得ながらも体制への疑惑が晴れることはなく、だが勢力を拡大してきたミュウたちに情けを
持つ訳にもいかなかった。S.D体制はあくまでもミュウを排除するのだ。           
過剰に進みすぎ人類の手をはなれてしまった科学、環境破壊の進行の警告、管理社会への恐怖、
そして青く懐かしい故郷に向けられた切ない思慕・・・20年経ってなお色あせないメッセージを
今こそ読んで欲しいと願う。                              




 以下、少しアニメ版の解説をしておこう。
 原作版をベースに作られた劇場用アニメは、ストーリィとしては大方沿っているの 
 だが、より話を簡略化するために設定が変えられたり消されたりしている。
 差し障りない程度に相違点だけを挙げておくことにする。 


劇場用アニメ・原作との相違点

1;トォニィはジョミーとカリナの実子!となっている。                  

原作では自然出産児第一号として(S.D体制下では試験管ベビーオンリーなので)ナスカに暮らして
いたときにカリナを母として生まれたが、父親は別のヒトだった。アニメ版でカリナとジョミーが
ラブラブ・・・まではともかく、その後ジョミーが「これこそ人類への最大のメッセージだ!」と
はしゃぎまわっていたのはちょっち心が痛んだ。                      

2;ジョミーは、ナスカ事件の後10年間「天の岩戸」状態だった。            

目、耳、口がきけない三重苦状態になるのは原作と一緒だが、原作は別にお籠もりはしない。ちな
みに原作でしかない「ジョミー凍りづけ」状態は、やはりナスカで起こったが、これは時期的には
随分前。キースがナスカに来た気配で起こされる。しかし、三重苦状態でもESP能力を持つミュウ
であるジョミーは割合不便してない。補聴器は役に立つんだろうか?(ブルーもね)      

3;ミュウの母船がサザエ貝型。                             

こんな相違点をわざわざ挙げる必要もないかとも思ったが。初めて見る人にあの母船のモノスゴイ
形はけっこーくるんではないかと思ったので。                       
デザイン系でいうなら、フィシスの髪は金髪なのに黒髪ワカメになっていたし、ジョミーもキレイ
なブロンドと作中で評されるほどだったのにオレンジになってる。キースの黒髪は灰色設定になっ
ていた。アニメ画面だと映えない色をどうにか変えたかったらしい。             
ただ、ブルーの髪の色がブルーだったのは非常に嬉しかった。あれ以外ないでしょう。彼のイメー
ジカラーリングは。                                   

4;エンディング                                 

これを詳しく解説する訳にはいかないが、もっとも大きな違いはここにあると思われる。何故なら
どんな物語も結末次第でまるきり印象が違ってくるからだ。                 
管理人は幼少期にアニメを見て、それからまもなく原作を読んだがやはり幼少期だったのでうろ覚
えで終わり、奇妙なきっかけで原作を読み返したのは高校を終わる頃だった。だから、という訳で
もないが、今から知ろうとするなら、まず原作から読んで欲しいと思う。原作派はアニメでイメー
ジを壊されるのを良しとしないだろうが、アニメはアニメ、原作は原作、と切り離して考えてくれ
ればいいんではなかろーか? それにアニメにはなにより「動く! しゃべる!」とゆーマンガで
は味わえない喜びがある。色もついている。ブルーの麗しかっこいいお姿といったらないですな。
あとは凄絶にカッコよいマントのひらめき具合とか、細かいところを言えばきりがない。