◆8巻(第71回〜第80回)



◆8巻第74回〜77回 (08/11/14更新)

萌え、というよりは純粋にツッコミ満載、ここら辺りの会話はとにかくどこをどう切り取ってもおもしろおかしいので是非原文を読んでもらいたい。

一応簡単になりゆきを説明。
八百里獅駝嶺というその山の、獅駝洞に棲む三匹の魔王は大変手強く数万もの妖兵を持ち、おまけに三蔵のことを喰おうと待ち構えている。
太白金星の忠告でそれを知った悟空は、まずはひとりで偵察に出かけ、知恵を絞って攻略開始。が、一度は正体を見破られてたからものの浄瓶に閉じ込められてしまう(まただよ…)。
なんでバレたかというと、顔は魔王の部下になってた悟空、実は顔だけ変えて躰がもとのまま、という化け方をしてたのだそうで。 …めんどがらずに全部変えておけよ、と思わずツッコミ。で着物をめくられて猴の躰としっぽを見られ、とっつかまる孫さま。
さりげなくここのしっぽに萌える私はヘンタイだろうか。…原典での「毛むくじゃら」はこの際きれいさっぱり棚にあげ、でもしっぽは隠せないんだー、しっぽ可愛い、と萌え全開。そういえば金角銀角の回でもしっぽが着物からはみだしてた。どうも、孫さまはしっぽをうっかり隠し忘れることが多いらしい。
で、浄瓶の中でぎゅうぎゅう蛇に締め付けられたり火龍に体中炙られて火傷したりとけっこう酷い目に遭いつつもなんとか脱出。三蔵のもとにすたこら戻って成り行きを説明するが、ぬあんと三蔵がもう一度、悟空に「私はこの山を越えたいんだから、妖怪を退治しにいけ」とけしかける(大笑)。
もともと負けず嫌いの孫さま、師父に真っ向からいわれては引き下がれず、しょうがない、今度は八戒を連れて再度戦いを挑む。もちろん八戒はいやいやついて行くのでちょーやる気ナッシング。
正面からまずは大魔王(此の場合三人の魔王のうち長兄ということ)と打ち合った悟空、わざと魔王に飲み込まれる(…まただよ)。そばで見ていた八戒は「師兄がたべられちまった」と大騒ぎして逃げ帰ってしまった。
逃げ帰った八戒は、悟空が死んだと聞いて嘆き悲しむ三蔵を尻目に「解散しよう、おいらは嫁さんのとこに戻るぜ」と荷物をわけ始めた。ちなみに彼は毎度毎度ほんとにこんな調子です(大笑)。
さて、飲んだ魔王は意気揚々と洞窟に戻り、おとうとたちに「孫行者をつかまえたぞ」と告げたが三魔王はあわてた。


「兄貴! 言うのを忘れていたが、孫行者は喰っちゃいかんのだ!

喰っちゃいかん、って、孫さまは毒かよ…ww いや実は毒より酷いんだがww
さらにすかさず悟空が腹の中から「喰えるとも! それに腹もちするから腹がへらんよ」となどと酷いことを答えてくるのでさらにあわてふためく魔王たち。無理矢理吐き出そうと苦心するが、悟空ぜんぜん出ようとしない(激笑)。


「孫行者、きさま出てこん気か」
悟空、
「まーだだよ、出る気はないね」
「何故だ」
「てめえ、化けもんのくせにものごとの変化ってもんがわからんのか。おれさまは和尚になってからはずっと薄着だ。いまは、もう秋なのに、ひとえの直(ジキ)トツをお召しなんだ。ところがこの腹のなかときたら、ぽかぽかあったかいし、風も通さないときてる。冬を過ごしてから出ることにするぜ」

なに言ってんだこのひとは。もう大笑い。冬までそんなとこで過ごしてどうする!!
(もちろん冗談というか魔王を脅かす口上でしかないのは判ってるんだが、孫さまの場合ほんとに出来るから困っちゃう)
このあとも、魔王が「出てこないなら毒殺してやる」と言って酒を飲みまくったらその酒を中でそっくり悟空が飲んでしまい、べろべろに酔っぱらって(孫さまは酒にはあまり強くない、との注釈つき)腹のなかで飛んだり跳ねたり大騒ぎ。魔王が根負けして悟空に許しを請う、という流れになる。

ここで75回幕引き、76回へ。
一度は悟空に降参した魔王、心を入れ替えて三蔵ご一行をかごで送りましょうというので悟空が許してやるのだが、当然ほんとは心なんぞ入れ替えてない悪党なのですぐに態度を変える。
一方、師兄が死んだので解散するぞ、と荷物を分けさせられてた悟浄、悟空が戻ってくるのをいちはやくみつけた。やっぱりな、と思ってたに違いない。すかさず「ほら、師兄は死んでなんかいないじゃないか」と怒り出す。
八戒は懲りずに「今日は日柄が悪いから兄貴は幽霊になってでてきたんだ」などと言うものだから、悟空、ばっちーん!とビンタ。(ビンタって………ww)
「ぼけなす! あほんだら!」とさんざん罵ってから師父に「化け物を降参させたからもう大丈夫」と説明した。
ところが、魔王はまたもや喧嘩を売ってくる。悟空は今度は八戒に「おぬしもちょっとは仕事しろ」とばかり、無理矢理戦わせた。八戒は悟空に「危なくなったら助けてくれよな」と自分に綱をつけてもらい、その先を師兄に持たせてからでかけたのだが、悟空はその綱を引いて助けようとはせず、逆にぱっと綱を離してしまい、八戒は捕まってしまった。
そのときのやりとりを一部始終見ていた三蔵と、悟空とのやりとりが猛烈嫉妬まみれで萌える。


「悟空よ、悟能がおまえのことを死んでしまえばいいと思っていたのも無理はない。
もともとおまえには、おとうとに対するいたわりの気持ちというものが、はなからないのだ。あるのはやきもちの気持ちばかりなのだろう。
(略)おまえ、どうして引っ張ってやらぬのだ。それどころか、縄をぷいと捨ててしまうなんて。あれが殺されでもしたら、どうするのだ?」
悟空、ニヤニヤしながら
「お師匠さまったら、八戒のことになると、なにもかもかばうんだから! えこひいきが過ぎますぜ。
この孫さまがつかまったときはへっちゃらだったくせに。どうせおれなんか、使い捨てなんでしょうが
あのぼけなすめ、つかまったのは自業自得なんですぜ。なのに、おれのことばかり、とやかく言うんだから!
あいつにも少しは痛い目に遭わせなければ、取経の苦労なんかわかりませんぜ」

この、ねちねち文句っぷりが、普段いかに八戒がえこひいきされてる、と悟空が感じてるか、を表してると思う。
だって子供みたいな駄々のこねかた! 三蔵はもちろんそんなことはない、と言い張り「心配してない風にみえるのはおまえの能力を高く評価しているからだ」と説明するのだが…どうかなあ…ほんとに?(笑)第三者からみてもえこひいきに見えますぜ?
結局、三蔵に「助けにいっておあげ」といわれ、悟空しびれをきらし「もうけっこう、助けにいってやりましょ」とツンツンしながら出ていく。内心ではさっきの「死んでしまえばいいと思っていたのも無理はない」という台詞に相当立腹。そらまあ、ふつうそんな悪口聞かされたら誰だってそうとう怒るよね。下手すりゃ絶交レベルだろ。少なくとも私だったら、影でそんなこと言われてたら一生根に持つと思う…。こゆとこ、中国人て即物的でおおらか、つうかこだわらないっつうか。
ちなみに、ここからは個人的主観だが、八戒がそう言っていた、ということよりも「そう思われても無理はない」と師父に言われたことのほうが悟空には百倍こたえたんではないかと踏んでいる。もちろん八戒当人にも怒ってはいるが、もともと「あいつなら言いかねん」と性格を把握しているので、そのへんは悟空も既に諦めた風情があるのだ。
その証拠に、とっつかまって縛られたまま池の中に放り込まれフーフー息切れしている八戒を見て、ひどくかわいそうにも思い、「やれやれ、しょうがない奴だなあ、困ったもんだ」と思案する悟空。憎たらしいけど憎みきれず、なにかと師父を唆し自分の頭を締め上げようと意地悪してくるおとうとがしゃくにさわるとぼやきつつも、ちゃんと助けてやる。
もちろんささやか?な仕返しするのは忘れないが。…始めに綱を引っ張って助けてやらなかったことを後悔するはずもなく。それは意地悪というよりは、八戒スパルタ教育の一環なのだろう。

77回。
この三匹の魔王とは幾度も対戦し、負かして降参させるたびに裏切られる、を繰り返す。三蔵だけならそれも仕方ないが実は悟空までもが、無邪気に「今度こそ少しは心改めたろう」と易々解放するのがスゴい。
ついでに、悪者には容赦ない悟空、今までの道のりで無数の妖怪を殺しまくっているのだが、思い切りが良く後腐れもない性格なために頻繁に「逃げる相手をそのまま見逃す」ということもしている。
九頭虫などは二郎真君に「逃すとやっかいなことになるから殺しておいたほうがいいぞ」とまでいわれたのに、「構わないから逃がしちまえ」とすっぱり。
多分、再び立ち向かってきたらためらいなく殺す自信があるからこそ、逃がしているんだろう。剛毅すぎる。なので、何度裏切られても悟空は過去の己の判断を後悔することはない。向かってきたら何度でも叩きのめす。それの繰り返し。
…が、この魔王たちはたいそうやっかいで、喧嘩を売り直されるたびにかなり酷い苦労を強いられる。それもまた修行、か。
なんだかんだとドンパチやる間に、妖怪の巣窟と化した街までおいつめられた三蔵一行、とうとう全員まとめてとっつかまって蒸篭の中に放り込まれる。悟空だけはあっさり抜け出したが、なかなか師父やおとうとたちまでまとめて逃がすところまでいかず、魔王たちも手強い悟空がいい加減厄介になったとみて一計を案じる。
魔王たちは、「三蔵が死んだと判れば悟空も諦めるだろう」とて、三蔵だけを別の場所に隠し、三蔵が既に喰われてしまったという噂を手下どもに流したのだ。
最初は信じなかった悟空も、つかまったままの悟浄や八戒までもが「師父は死んでしまったらしい」と口々に言うのでどびっくり!
おとうとたちを助けることも忘れてその場を飛び出し、ひとり慟哭。猛烈錯乱してしまう。
ここいらの錯乱ぶりが、師父のことしか考えてない悟空の思考回路が読み取れてそーぜつ萌えなのだが、…まあさすが、切り替えもはやく、「せめて師父のかわりに経典を自分が唐に運んでやろう」とか、「頭の緊箍を外して俗世に戻してもらおう」とか、かなり勝手なことも考え、如来に直訴することに決めた悟空、一目散に雷音寺まで(悟空ひとりだとほんとあっちゅう間に着くんだよねえ、なんともまあ辛い旅路だ)。如来の前でまたわあわあと泣きながら師父が死んでしまったことを切々と訴えた。
如来は師父の死に大泣きする悟空をなだめ、自ら妖魔を収伏させてやろうと重い腰をあげてくれる。あとは一件落着の幕引きということで省略。ご本尊(如来)まで引っ張り出して妖怪退治という、とにかく盛大なドンパチである。
この話、大筋では何度も使われた黄金パターンの連続なのだが、やりとり自体がいちいちおもしろおかしくてとんでもないのが醍醐味。
ところで、悟空は、妖怪が降伏してもなおしばらくは、三蔵が死んだと信じていたので、妖怪が「貴様のせいで唐僧は喰えなかったんだぞゴルぁ!」とやけになって怒鳴り散らすのを聞いて感激! そこでやっとこ悟浄や八戒も助けに戻ったのだった。
…まさか三蔵が死んでたらおとうとたちも忘れたままだったか…???いやそんなはずはない、と思いつつも、このあとまわしさ加減にいっそ感服。さすが三蔵ひとすじツンデレ孫さま。(注;このあとまわしさ加減が、実は9巻90回で覆されるというのも孫さま驚きの心情変化。90回は悟浄萌え最重要ポイントなので後日)