◆9巻第88回〜90回
(09/01/31更新) かなり終盤。相変わらずの黄金パターンで構成されているのだが、不思議と飽きないのはひいき目か、それとも「黄金」に足る痛快劇だからこそ、か? 西遊記題材のドラマやマンガは数知れず有るが、原作から抽出される決まった有名どころは悟空以外の弟子が仲間になっていく過程をのぞけば、「金角・銀角」「白骨精〜宝象国(悟空破門事件)」「紅孩児」「六耳ビ猴(悟空破門事件2)「牛魔王」あたりで、中盤以降のネタはわりあい捨て置かれることが多い。 (「人参果」「烏鶏国」「車遅国」「子母河」あたりが次点で、話数に余裕があるドラマなどはよく使われる) なにせ全100回だし、同じパターンぽいのはすぐ略されてしまう。なので、私としてはその捨て置かれる系の話を積極的に、先に紹介したい。 とくにこの話は、9巻でも原作萌えな人しか注目せず(笑)ドラマやマンガの題材になったのをほとんどみたことがない、という、びみょーにレアな話。ついでに超!悟浄に萌えていただきたい。 解説。88回。 はるばる西をめざし旅を続けてきた三蔵一行。 めざす天竺の国にようやく足を踏み入れ、その一端である玉華州へと入る。三蔵がひとりで玉華王に謁見し、通行手形を出して検印してもらった際、王は親切にも三蔵に、弟子たちがいるのなら一緒にお斎をふるまってあげようと申し出た。 外で待っていた弟子たち、呼ばれて王のもとにやってくると、…まあ当然「ぎゃっ妖怪が!」という反応になるわけだが、さすが品の良い王は、その場では精一杯普通のそぶりをしてあげて、約束通り別棟でお斎を出してくれた。 王は、そのあとびくびくしながら内宮へもどると、三人の王子がやってきて父親の顔色が悪いことを問いただす。王は、三蔵と、その妖怪三人弟子のことを話し、怖かったwwとつい零すと、血気盛んで武芸大好きな(よーするに脳みそ筋肉系?)王子たちは、もしや害を成す妖怪かもしれないから様子を見に行ってあげましょう、とよけいなことを言って武器をめいめい持ち、飛び出した。 一方三蔵一行は、のんびりお斎を食べていたのだが、王子たちが乱入してきたので三蔵はびっくり。悟空も悟浄も剣呑な雰囲気で構える。ただひとり八戒だけはわきめもふらずがつがつと飯を喰う中、王子たちは悟空たちにむかって「この化け物どもめ!」と息巻いた。 ここで、悟空も悟浄も「われらはちゃんと人間だ」と答えているんだが。 …えww 人間じゃないよねあんたら…。つか、心は人間、って言いたいんだろうが、なんかいろいろツッコミたくなる一場面。そして八戒だけへーぜんと飯かっこみ振り向きもしないのがすばらしい。 さて、一番最初に挑発したのも八戒なのだが、当然といえば当然、ただの人間相手に悟空たちが本気になるわけもなく、かるーくちょんといなしただけで王子たちはへなへな。ようやく悟空たちが妖怪ではなく神仙のたぐいだ、と気がついて、あわてて平伏し、無礼を詫びた。 このへんさすが、行儀のいい王子たち。素直に負けを認め、悟空たちを急に敬う。つうかすごい変わり身の早さ。 悟空たちも悪い気はせず、王子たちにひとしきり舞をみせてやり、そのあと武芸を教えてやることにまでなった。悟空は、王子たちの人柄を見込んでちょっとした仙術も仕込んでやり、めでたく王子たちは、普通の人間には持てない筈の金箍棒やまぐわ、降妖杖を持てるようになった。 しかし、肝心の武器自体は王子たちに譲ってやるわけにはいかない。なら重さをうんと軽くして良く似た武器を鍛冶屋に打たせようということになり、悟空たち三人は大事な武器をいっとき手放し、見本に、と貸し出してやる。 でもって、これが、やっかいの火種になるわけである。 キラキラ瑞気漂うすばらしいたからもの、であるところの金箍棒、まぐわ、降妖杖は悟空たちが普段身につけていればそんなに目立たないのだが(当人たちの気配の方が強いらしい。さすが妖怪、つうか神仙)、なんもないところにほっぽっといたので、そりゃもう美しい五色の光を放って、珍しものずきの妖怪の目にとまってしまった。通りすがりの妖怪が「わーいおたから!」と夜中のうちにかっさらってしまう。 89回。 翌朝おきた鍛冶屋が蒼白! たからがない!! 悟空たちに「まさか持ち帰ってないですよね?」と聞くが、悟空は知らないよ、ときょとん。八戒がとたんに「おまえらが盗んで隠しやがったんだろ!」と怒り出す。 悟空はしかし、これは自分らがしくじった、と苦い顔で八戒をたしなめた。「おれたちの武器はみな美しい霞光を発するから、身辺から離したらダメだったんだ。多分どこやらの悪党の目にとまって盗まれたんだろう」と言う。が、八戒は信じない。 鍛冶屋たちが泣きながら身の潔白を訴えるところで王たちも到着。事の次第を聞いて一生懸命鍛冶屋たちの潔白を証明しようとする。が、怒りっぱなしの八戒を上手に引き下げながら悟空は笑んだ。 「大丈夫、潔白だってことはわかってる、どうせ妖怪の仕業だから」と。 そして更に尋ねる。近くに妖怪が棲んでそうな山とか谷はないか?と。王が「心当たりが一カ所」と答えると、悟空はそいつに決まった!と雲にのってひとっ飛び。 やってきたのは獅子やらの化け物がいるとの噂、豹頭山。 さっそく様子をさぐってみるとちょうど妖怪が二匹、「ワーイまぐわパーティー開くんだぜー」と大喜びしながらてくてく歩いている。それをきいて悟空もやっぱり、とにやにや。二匹を金縛りにかけて動けなくすると、もっていた金をぶんどって、一旦王たちのもとへとってかえし、説明した。 妖怪たちはパーティーを開くために羊や豚を買いにいくところだったらしい。 悟空は、自分と八戒とでその下っ端に化け、悟浄を家畜の商人という設定にして化け物のねぐらに乗り込むことにした。ぶんどった金は鍛冶屋にまるごとくれてやり、王に羊や豚を用意してもらう。王も否やはなく、悟空の策略を手伝ってやる。 弟子三人は、そうしてまんまとねぐらの中に潜り込み、妖怪どもの洞窟に飾ってあったじぶんたちの武器を奪い返すやいなや、大暴れ。親分の黄獅はかなわず逃げていったが、悟空はそれを敢えて逃がしておいて、ねぐらの洞窟を焼き払ったww 手下妖怪はみんな野の獣たちだった。 悟空たちはもう一度王府に戻り、たからを無事取り戻したこと、妖怪のすみかを焼き払ったことを告げる。が、親玉が逃げたときいて王が心配そうなので悟空は付け足してやった。実はヤツを逃がしたのは策があってのことだ、と。 要するに逃げ帰る先に、ほんとの大親分がいるはずで、きっとそいつが報復にやってくるから、そしたらそいつを撃退してきれいさっぱりにしてあげます、というのだ。 予想通り、逃げた黄獅は祖父の「九霊元聖」に助けをもとめていた。ぬあんと首が9個もある、すっげえ獅子。まごが喧嘩をうったのがどうも五百年前に大閙天宮をやらかした斉天大聖孫悟空らしい、と判って呆れた。 「(略)やつはな、孫悟空と言って、とんでもない神通力の持ち主だぞ。五百年まえ、こやつが天界で大あばれしたとき、十万からの天兵でも、取り押さえることができなんだ。こやつは、自分から好きこのんで面倒を引き起こす専門家なんじゃ。山をうろつき、海をひっくり返し、洞窟をぶっつぶし、まちを攻めるという、なんでもありの、疫病神の頭目なんじゃよ。 おまえ、なんでまた、よりにもよって、そんなやつと、かかわりあいをもったんじゃ?(以下略)」 まあとにかく手伝ってやるから仕返しにいこう、ということで、獅子どもは翌朝、王府へと大群(軍)をさしむけた。迎え撃つ三弟子たち。 90回。 九霊元聖は、黄獅ふくめ7匹のまご獅子たちとともに街に攻めてきた。 三弟子はそれぞれ応戦するが、形勢は不利。八戒が最初に負けてとっつかまったのであわてた悟空、にこ毛をひとつかみ抜いて噛み砕き、百人からのちび悟空に変えて応戦。すかさず二匹獅子を生け捕りにして退却した。その日はおひらき。 …このへん、ツッコミ処満載なんだけど…。まず悟空が弱すぎる。五百年まえ十万の天兵をたったひとりで相手どったひとが、特殊な相手ならともかくただの?獅子が7匹居たって問題ないだろwwwまじめにやれ孫さま!! 八戒がつかまったとたんスゴい勢いで獅子をぶちのめせるので、なんだか相当力を加減しているっぽい雰囲気です。…なんで?? 次の日、こんどは五匹の獅子と、悟浄&悟空がドンパチ。ところがこっそり黒雲にのって九霊元聖が城の中にもぐりこみ、王、三人の王子、三蔵を口にくわえて攫っていってしまった。さらに、悟空たちの横を通りながら「先に帰っているぞ」とて、自分らの陣地から捕らえていた八戒もついでにくわえて自分の洞に駆け戻ってしまった。 しまった!策略だった!と気づいた悟空、あわててにこ毛を1000人のちび悟空にかえて、その場にいた5匹の獅子をたちまちぶちのめした。黄獅はあえなくここで討ち死に。残り4匹は最初の2匹とまとめて生け捕り。 …だからーーできるなら最初からやれ…孫さま!!!! とにかくその日はまたお開き。お斎をもらって一休み。 翌日悟浄と連れ立って悟空は九霊元聖のいる竹節山九曲盤桓洞とやらにやってくる。仲間を返せとわめく悟空の声に、九つ首の元聖はノシノシ出てきて、こともなげに 悟空と悟浄をぱくり、捕まえた。 孫さま!!!! だから弱すぎ!!!(前半の暴れっぷりがとても信じられん!) とっつかまった二人は縄でぐる巻きにされ、先に捕まっていた王や三蔵たちと一緒に転がされる。すでに一匹、悟空によって孫を殺されている九霊元聖は、しかしそれだけじゃとても腹の虫が治まらず、子分たちに悟空を棍棒でしこたまぶったたけ!と命じた。子分たちは三人がかりで悟空をガンガンぶったたく。 すごい勢いで延々打ち続けるので打ってる棍棒の方が折れたりして、そばでそれを見ている三蔵や王たちは痛々しくてぞっと身震いするのだが、とうの本人は「金鋼の躰」なので没問題。好きなだけ打たせてなすがまま。 そうして日も暮れて!もまだ打たれ続ける悟空を見かねた悟浄、とうとう我慢できなくなって、こんなことを言い出す。 「わしが代わりに、百回くらいぶたれてもいいぞ」 悟浄!!! 自分が師兄の身代わりに、なんて、こんな場面でよくも恐れげもなく!!なんていいやつなんだ悟浄!! ていうか悟空は術(?)でちゃんと躰をガードしてるんだよ!あんたがぶたれたらただじゃすまないよ!!!落ち着け! 幸い?にも元聖はとりあわず「慌てなくても、明日はおまえをぶってやるから」と答えた。八戒は「んじゃ明後日はおいらかい!」とあわあわ。 結局そのまま、また悟空はたたかれ続けた。夜になり、元聖は「一眠りしてくるから」とて、子分たちに休憩と見張りを言いつけ、その場を外す。 子分たちは明かりをつけて、夜更けまでずっと一生懸命悟空をぶち続けた。夜半になってようやく子分たちが疲れてうとうと舟をこぎ出した…あたりで悟空、するっと縄から抜け出る。 悟空、丸一日ぶたれ続けてえらいご立腹。子分どもに「よくもさんざぶちのめしてくれたな!お返しにこの棒をくらえ!」とばかり、金箍棒を巨大にして一振り。あわれ子分たちはあっというまに血の海に沈む。 そこで、悟空はまず悟浄の縄をといてやる。すると、それを見とがめた八戒がすごい大声で「なんでおいらから縄を解かないんだ!!」と猛抗議。その大声に、せっかく寝ていた九霊元聖が寝床から出てきてしまった。 悟空やむなく明かりを吹き消し、あきらめて悟浄もその場に置いたまま、ひとりだけむちゃくちゃ棒を振り回し壁をぶちやぶって外へと逃れていった。 ここで萌え考察。 悟空は、いつもまっ先に師父の縄を解くはずなのに、このときだけあえて悟浄なのは、…まあ、冷静に考えればこの段階で三蔵を助けてもどうせ雲にはのせられないし逃げられないから、手助けになるおとうとを先に、ということなんだろうが、それなら八戒でいいはず(いままでの例では必ず八戒を悟浄より先につれていく)。 ここはやはり、さすがの孫さまも「さっきみたくおれさまの身代わりなんて言い出されたらたまらんから先に助けとくか」と気を遣ったんじゃなかろうか。 でもって、もしほんとにそうだとしたら、こんな風に気を遣うのも孫さまとしてはものすごく珍しいことで、…しかも、それを八戒が「悟浄をおいらより先にほどくなんてずるい!」と怒鳴っちゃう辺り、…三弟子のびみょーな相対関係を現しているようで、実に萌える。 ついでに、もひとつ萌え考察。 いくら悟空がいくら叩かれても大丈夫と言われても、外から見てりゃちび猴がぺったんこにされてぼろ雑巾扱いになってる状態、なわけだから、そりゃみるからに痛そうだし気の毒そうだ。三蔵も真っ青になってた、っていうし、まあ悟浄が必死で庇おうとしちゃうのも、わからなくはない、かな。…つうか庇いたくなるほど、師兄が大事なわけね。要するに。 ところでほんとのとこ、悟空はへいちゃら言うけど、ほんとにへいちゃらなの? むしろ私はそっちの方が気になる。ほんとご都合な設定だから平気なときは全然平気なくせに、ダメなときは設定丸無視でダメだから… …ま、詳細を描きたかったら好きなように設定し直せってことだよね西遊記!!萌え変換させてもらおうっと!!(ゴルぁ) 話をストーリーに戻す。 逃げ出した悟空、一旦玉華州の城に戻ると、そこには城煌神やら土地神やらが集まっていて悟空をみるなり拝礼。悟空は「いまごろのこのこ来やがって」とご機嫌ななめだが、師父を守護しているはずの偈諦やら六丁六甲やらがひとりの土地神をひったてながらあわてて悟空においついて、拝礼。 ひったてられた哀れな土地神は、化けものの住処の神。化け物の氏素性を知っていた。さっそく妖怪の「飼い主」を聞き出す。 飼い主は誰か、というと、東極妙巌宮のあるじ太一救苦天尊。九つ頭の獅子を乗り物にしているえらいおかた。悟空もなるほど、あれのペットか、と納得し、雲にのってひとっとび。かくかくしかじか、と助けを求めた。 天尊はペットの飼育係を呼び出し、事情を聞くと、係の童子は酒を盗み飲みしてその効果で眠りこけていたらしい。しかも、その酒は太上老君の作った特別製。酔えば三日眠り続ける、のだそうだ。…太上老君、へんなくすりつくりすぎだっつの!!! (だいたい、その酒はいったいどんな役に立つの???) 悟空は天尊と化け物退治に戻る。あるじがお出ましになり、化け物はあっさり降伏。 一緒についていったペット飼育係が「このやろう。おまえが脱走したせいでおれが怒られたじゃないか!」と、自分の盗み食い(飲み)をきれいさっぱり棚にあげて手がしびれて痛くなるまでげんこつでペットを殴り続けた、というのはスゴいツッコミ処だが…それは置き、ようやくめでたし、の結びに。 今度は、悟空落ち着いて礼儀正しく玉華王から縄をとき、三蔵、八戒、悟浄、最後に王子三人を離してやった。みんなそろって王府に戻る。 しばらく飲めや歌えの大宴会、そしてめでたく三王子のパクリ武器も出来上がり、改めて王子たちに武芸の稽古を仕込んでやる三弟子。王は感激し、悟空たちに金銀を渡そうとするがガンとして受け取らないので、代わりに全員の服を新調して贈った。みんなぼろい着物だったのでそっちは喜んで受け取った。 ちなみに、この王は大変物わかりが良く聡明で、三蔵が「先を急ぐから」と言えば無理に引き止めることもせず、盛大に送り出してくれる。 そんなわけで憂いもなく三蔵一行は玉華州をあとにして、さあ、お次の巻へ行くんでありますよ。 |